手形割引とファクタリングの違いやメリット・デメリットを解説

「ファクタリングと手形割引はどう違うの?」
「手形割引とファクタリング、どちらを利用すべきか知りたい」
という事業者の方のために、ファクタリングと手形割引の違いを手数料やスピードなど項目別に詳しく解説して参ります。
手形とは?


そもそも商取引において、手形とは、
「サービスや商品納入の対価を一定期間後に支払うことを約束したもの」
です。
手形を発行すれば手元に現金がなくとも、掛け払いをすることができます。
以前の商取引では手形による支払いが一般的でしたが、事務の手間や管理の大変さといった理由から現在では手形取引自体が減少しつつあります。
手形割引とは?
取引先から振り出された手形は、銀行や手形交換所といった金融機関で現金と交換してもらうことができます。
なお手形は支払い期日前でも現金化することができ、そのことを手形割引と言います。
手形割引は分類上融資であり、受け取った手形を金融機関に買い取ってもらう資金調達手段です。
なお手形割引の際には審査が行われ、割引率という名の手数料が差し引かれます。
手形と売掛金との違い
手形も売掛金、どちらも掛け払いをするという点では同じです。
ただ約束手形は、未払いの際の強制力を持っています。
取引先が売掛金の支払いを滞納している場合、督促などをするしかなく、すぐに回収することはできません。
また掛け払いをしている企業の方(発注先)が立場が上であることが多く、一方的に支払い期限を延ばされてしまうこともあります。
一方で手形の場合、受取人が金融機関で手形を現金化できない場合、振出人は不渡りとなってしまいます。
不渡りを半年間に2回起こしてしまうと、銀行との取引ができなくなり、事実上の倒産は免れません。
まとめとして、手形割引と売掛金は
「不渡り=半年に2回で銀行との取引停止」
の有無という違いがあり、支払いの強制力が異なります。
手形取引の方が確実に代金を回収できる可能性が高いと言えますが、それでも前述の通り企業間の支払いは手形取引ではなく売掛金が一般的になりつつあります。
ファクタリングとは?
手形取引から売掛金での取引に商習慣が変わったことで、手形を金融機関に買い取ってもらう手形割引が無くなってしまい、中小企業の事業者にとっては資金調達手段が消失してしまいました。
そこで考案されたのが、売掛金を買い取るファクタリングです。
ファクタリングとは、未払いの売掛金をファクタリング会社が買い取ることで経営に必要な資金を調達するという手段です。
後述しますが手形割引に比べて多くのメリットがあり、中小企業〜個人事業主の方から多くの注目を集めています。
それでは続いて、ファクタリングと手形割引の違いを詳しく解説して参ります。
ファクタリングと手形割引の違いとは?


ファクタリングと手形割引は、どちらも売掛債権を売却し資金調達をするという点で同じです。
ただファクタリングと手形割引には明確な違いがあります。
それは
手形割引は融資ですが、ファクタリングは融資ではない
という点です。
融資かそうでないか、という違いがあるためファクタリングと手形割引には金利手数料や審査の有無、調達スピードなどが異なります。
続いて詳しい違いを項目別に見ていきましょう。
①手数料・割引率の違いを比較
ファクタリング | 手形割引 |
5%〜25%(手数料) | 1.5%~6%(割引率) |
手形割引の際の割引率は、金融機関によって異なるものの1.5%~6%程度が相場です。
なお手形割引は融資ですので、利息制限法の影響を受け、20%を超える割引率がかかることはありません。
一方でファクタリングでも、売掛金の売却時には買取手数料が発生します。
手数料の相場は2社間取引・3社間取引を合わせて5%~25%です。
またファクタリングは融資ではないため、利息制限法の影響は受けません。
そのため20%を超える手数料でも、違法にはならないのです。
加えてファクタリングの手数料は1ヶ月単位の手数料です。
割引率が年利であることを鑑みると、ファクタリングの手数料は手形割引よりも遥かに高額であることがお分かりでしょう。
②審査の有無を比較
ファクタリング | 手形割引 |
ナシ | アリ |
手形割引は融資ですので、信用情報の審査が行われます。
●債務超過
●赤字経営
●税金・保険金の未払い
を起こしてしまっている場合は、審査落ちとなり手形を割引することができません。
一方でファクタリングは、融資ではないので審査がありません。
ファクタリングの審査で重要視されるのは、売掛先の経営状況や売掛金の回収リスクです。
申し込み企業の信用情報はほとんど見られません。
売掛金さえ有していれば、上記に当てはまる方でも、ほぼ確実に資金調達をすることができます。
③調達スピードを比較
ファクタリング | 手形割引 |
最短即日~3日程度 | 最短即日~数日 |
ファクタリングは審査がないため、2社間取引を利用すれば最短即日で資金調達をすることができます。
一方で手形割引の場合、審査対象が多い銀行の場合は調達まで数日かかることもありますが、大黒屋など民間の手形割引専門業者を利用すれば最短30分程度で審査結果が出ることもあります。
ファクタリングと手形割引、どちらも最短即日での資金調達が可能ですが、よりスピーディなのは手形割引の方だと言えるでしょう。
④信用情報への記録の有無を比較
ファクタリング | 手形割引 |
ナシ | アリ |
手形割引は融資ですので、利用状況は信用情報へ記録されます。
また
「支払い期日前に手形を現金化するということは、資金繰りに窮している可能性が高い」
と見なされて、銀行からの評価がマイナスになってしまう恐れもあります。
一方でファクタリングは融資ではないため、利用しても信用情報に記録されることはありません。
加えてファクタリングを利用すると手数料がかかるため、オフバランス化によって貸借対照表の指標などが向上するという利点もあります。
バランスシートの総資産を減らすこと、利益は変わらないので純資産利益率(ROA)などの指標が向上する
結果的に企業価値が上がり、銀行からの評価も上昇すると考えられます。
銀行融資をご利用の際には、審査にプラスに働くでしょう。
⑤調達可能な金額を比較
ファクタリング | 手形割引 |
売掛金の60%~70%程度 | 手形の90%程度 |
前述の通りファクタリングには手数料がかかります。
加えてファクタリング会社は売掛金の全額を買い取ることはなく、通常は売掛金の8割程度が買取対象です。
そのためファクタリングで調達できる金額は売掛金の8割を超えることはなく、60%~70%程度となります。
一方で手形割引の場合、調達可能な金額は割引料を引いた金額です。
同じ金額の売掛債権であれば、手形割引を利用した方が調達可能な金額は大きいと言えます。
⑥償還請求権の有無を比較
ファクタリング | 手形割引 |
ナシ | アリ |
償還請求権とは、流通を遡って代金などの弁済を要求する権利のことを指します。
手形割引では償還請求権がついています。
手形割引を利用した後、振出人が不渡りを起こしてしまった場合には、譲渡人である利用企業が金融機関に弁済を行わなければいけません。
一方でファクタリングは償還請求権がありません。
ファクタリング利用後、取引先の倒産などで売掛金が未回収となってしまってもファクタリング会社への弁済は不要です。
手形割引に比べて、ファクタリングは貸倒リスクを回避することができると言えるでしょう。
ファクタリングと手形割引のメリット・デメリットを比較


最後にこれまでの比較内容を踏まえて、ファクタリングと手形割引のメリット・デメリットを比較してみましょう。
◉期日前に手形を現金化することができる
◉金利(割引料)が低い
◉調達スピードが速い
◉銀行融資よりも審査は甘い
一方でファクタリングのメリットは以下の通りです。
◉審査がなく、債務超過・赤字経営でも利用できる
◉調達スピードが速い
◉信用情報に記録されない
◉担保や保証人が不要
◉償還請求権がない(ノンリコース )
◉ROAなどの指標が向上し、銀行からの評価が高まる
続いてデメリットについても比較していきましょう。
◉審査があり、経営状況次第では利用不可
◉信用情報に記録される
◉償還請求権がある
◉手形取引自体が減少している
最後に、ファクタリングのデメリットです。
◉手数料が高い
◉掛け目があり、売掛金の満額が買い取られるわけではない
まとめ
手形割引は割引料の低さや調達スピードの速さなどから、有力な資金調達法です。
しかしながら近年は手形取引自体が珍しくなっており、利用ケースは少ないと言えるでしょう。
また償還請求権があり振出人が不渡りを起こしてしまう点には注意しなければいけません。
一方のファクタリングは、手形割引にとって代わる新たな資金調達方法として注目を集めています。
融資ではないため審査がなく、最短即日での資金調達も可能です。
償還請求権もないため、中小企業や個人事業主の方は有事の際には手形割引よりもファクタリングの利用をオススメします。