10年間返済不要の公的融資「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」の特徴や活用方法を徹底解説します!!

10年間以上返済不要な公的融資があるのをご存知でしょうか?
資本力が弱い企業が借入をすることで、資本力が大きく強化されることになります。
さらに、長期間返済が不要ですので、将来的に事業が軌道に乗るまでは本当に資本金と同じような形で利用することも可能です。
日本政策金融公庫では10年以上返済不要の融資制度として「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」という商品があります。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の特徴と活用方法について詳しく解説していきます。
資本力が弱い中小事業者やスタートアップの方は、有力な疑似資本の調達方法として頭に入れておきましょう。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の特徴について


融資対象者 | ・地域経済の活性化にかかる事業を行うこと・税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納していること・所定の融資制度の対象となる事業者であること |
融資限度額 | 4,000万円 |
返済期間 | 5年1ヵ月以上15年以内 |
返済方法 | 期限一括返済(利息は毎月払) |
金利 | 1.05%〜6.20% |
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は期日に一括返済で、金利は審査によって決まるのではなく、売上高減価償却前経常利益率によってあらかじめ固定されています。
金利については詳しく後ほど後述します。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の主な特徴として以下の3点をあげることができます。
- 最長15年返済不要
- 期日一括払い
- 利息は毎月返済
基本的には5年〜15年の間に一括返済をすればよく、その間元金の返済はありません。
ただし利息だけは毎月の支払いになるので注意しましょう。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の3つの特徴を詳しく解説していきます。
①最長15年返済不要
日本製作金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の返済期間は5年1ヶ月以上15年以内と決められています。
つまり、15年以内であれば任意で返済日を設定することができ、最長15年間も元金を1円も返済する必要がないというのは大きなメリットだと言えるでしょう。
借入金というのは、お金を借りたときには、借りた分だけ資金力が増強されるので企業の体力が上がります。
しかし、その借入金によって調達した資金を使い切ってしまった後には返済だけが残されるので、むしろ企業の資金繰りが悪化する傾向にあります。
日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)であれば、期日まで返済の必要性が全くありません。
返済日が到来するまでは疑似的な資本になるので資金繰りが大きく向上する効果があります。
②期日一括払い
日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は最長15年の範囲内であらかじめ決定した期日に、借入額を一括返済することと決まっています。
分割返済によって少しずつ資金繰りが悪化してしまうような心配はありません。
資金を借りた後は事業を成長させ、資金力を増強させることによって、後ほど一括返済するローンです。
まさに、資金的に脆弱な創業間もないタイミングで疑似的に資本を増強することによって、企業経営を安定させることが目的のローンだということができるでしょう。
③利息は毎月返済
日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は、利息だけは毎月支払っていかなければなりません。
元金の返済は期日に一括返済するため、期日までは1円も支払いはありません。
しかし、借入金である以上、利息だけは毎月発生してしまいます。
利息だけは毎月払っていかないと、借入残高が利息によって増えていくリバースモーゲージのようになってしまうため、利息の支払いだけは毎月行っていく必要があります。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)が10年とか15年返済不要だからと言って、何も支払いが必要ないわけではないので注意しましょう。
利息の支払いだけは毎月必要になります。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の金利とは!?


挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の金利は以下の2つの要素のよってあらかじめ決められています。
- 売上高減価償却前経常利益率
- 借入期間
借入期間/売上高減価償却前経常利益率 | 5年1ヵ月以上7年以内 | 7年超9年以内 | 9年超12年以内 | 12年超15年以内 |
5%超 | 5.30% | 5.60% | 5.95% | 6.20% |
0%以上5%以下 | 3.20% | 3.35% | 3.50% | 3.65% |
0%未満 | 1.05% | 1.05% | 1.05% | 1.05% |
このように、経常利益率が低いほど適用される金利は低くなるので、収益力の弱い企業ほど好条件で融資を受けることができます。
あらかじめ自社に適用される金利が分かっているというのは大きなメリットだと言えるでしょう。
ただし、経常利益率が5%を超えると5%以上の高金利になってしまいます。
例えば、挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)を4,000万円借りて、金利が5%の場合には、利息の支払いは年間200万円、月々166,000円以上もの負担です。
このローンはあらかじめ金利を知ることができるので、適用される金利が低く利払いに耐えられる程度の負担であれば利用を検討する必要があります。
金利はあらかじめ把握しておきましょう。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は利益率の低い企業を助けるローンだということができます。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)はどんな時に活用できる?


挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は疑似資本金として活用できるローンですが、主に以下のような場面でより有効に活用することが可能です。
- 資本力の弱いスタートアップ・ベンチャー
- 債務超過に陥った企業
- 社会的な不景気
①資本力の弱いスタートアップ・ベンチャー
事業を始めたばかりのスタートアップやベンチャー企業は挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)を借りておくことで資本力が増加して機動的な経営ができるようになります。
例えば、事業開始時から大規模な設備投資を行い、一気にスケールメリットを得ようとする場合、手元に資金がなければこのような戦略をとることはできません。
仮に銀行から長期資金で設備資金を借りたとしても、当該投資がすぐに成功しなければ返済に困窮することになってしまいます。
ベンチャーやスタートアップは、事業開始から事業が成功するまでにはどうしても一定の時間がかかってしまいます。
このような時に挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)を利用することによって、資金力を確保しつつ返済を行う必要がありません。
企業は経営が軌道に乗るまで資金繰りを気にすることなく、経営に邁進することができるので最適です。
②債務超過に陥った企業
債務超過に陥った企業にも挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は最適です。
債務超過とは総資産を超える借入を行い、資本がマイナスの状態です。
銀行からの借入がストップした時点で経営が困難になる上に、すでに借入が多い状態ですので返済によって資金繰りは火の車になっています。
このようなときに長期間返済不要な疑似資本である挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)を利用することによって、資金繰りは円滑になります。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の借入金によって経営を立て直すことができるので、債務超過の企業でも腰を落ち着けて経営再建に取り組むことができます。
③社会的な不景気
コロナ禍やリーマンショックによって社会的な不況になった場合には、挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)が活用できるでしょう。
社会的な不況の際にはいつその不況が終わるか分かりません。
例えば、コロナ禍においても、いつワクチンが完成してコロナによる不況が終息
するのかは見通しが立っていない状況です。
このような時には企業の資金繰りは「できる限り多くの資金を確保し」「手元の資金流出を防ぐ」というのが基本になります。
借り入れたお金を長期間返済する必要のない疑似資本になる挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)はまさに「できる限り多くの資金を確保し」「手元の資金流出を防ぐ」という資金です。
社会的な不況の際には挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は大いに活用することができるでしょう。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の3つの注意点!!


挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は毎月の返済はありませんが、その分注意点もあります。
- 毎月の利払いは経常収支を圧迫させる
- 期日に現金を用意できないリスク
- 交渉しても期日の延長に応じてもらえる保証はない
最後に挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)の3つの注意点について詳しく解説していきます。
①毎月の利払いは経常収支を圧迫させる
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は毎月利息だけは支払っていかなくてはなりません。
前述したように、4,000万円を5%で借りた場合の年間の利息支払額は200万円にもなります。
営業外費用である支払利息は金融機関の経常利益を非常に圧迫してしまうことになりかねません。
いくら「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は元金の返済がない」と言っても、借入額が大きければ支払わなければならない利息も非常に大きくなってしまいます。
借入時には利息の支払いがいくらで収益をどの程度圧迫するのかということと、資金繰りを考慮した上で利用するようにしてください。
②期日に現金を用意できないリスク
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は期日に一括返済となります。
そのため、期日に一括返済することができなければ借りた資産を差し押さえられてしまうリスクがあるので、この点だけにはかなり注意する必要があります。
例えば、創業時に挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)を借りて、10年後に一括返済するという計画だったとしても、10年先のことなど分からないのが当たり前です。
もしかしたら、会社が倒産している可能性もあり、その場合には代表者個人が返済義務を負う可能性大です。
擬似資本として会社が順調になる前まで返済する必要のないローンですが、期日には多額の借入金を一括返済しなければならないという点には十分に注意するようにしてください。
③交渉しても期日の延長に応じてもらえる保証はない
期日に一括返済しなければならない挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)ですが、万が一返済が難しくなった時には、日本政策金融公庫へ交渉して、返済期日の延長や分割返済への切り替えを交渉することができる余地はあります。
ただし、あくまでも余地があるというだけで、交渉して必ず期限の延長や分割返済に応じてもらうことができるとは限りません。
場合によっては一括返済を求められ、返済できない場合には財産の差し押さえ等の強制執行になってしまう可能性もあるので、やはり期日に一括返済できるように資金確保をしておくようにしてください。
まとめ
日本政策金融公庫には最長10年〜15年まで返済不要のローンである挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)という商品が用意されています。
一定期間返済が不要になるので、あたかも資本金のように企業の資金繰りに寄与し、借りている間の企業経営は安定します。
資金力の弱いベンチャー企業や、不景気の際になどに利用することによって会社経営を安定化させることが可能です。
しかし、利息の支払いだけは毎月発生するので借入額と金利によっては利払いが資金繰りと収益を圧迫し、さらに一括返済時に資金を用意できないと経営者個人が自己破産しなければならないようなリスクも生じるでしょう。
メリット・デメリットが非常にはっきりとしたローンですので、特徴をよく理解して上手に付き合うようにしてください。