自己資金なしで創業融資が可能?日本政策金融公庫と制度融資を比較!!

事業を始める際の必要資金を借りる方法が創業融資です。
創業融資は銀行や日本政策金融公庫から借りることができますが「どちらへ申し込みをしたらよいのか分からない」という人も多いのではないでしょうか?
日本政策金融公庫と制度融資の創業融資は金利等の条件はほとんど同じですが、信用保証協会の保証が必要かどうかなどの点で違いが大きいのも事実です。
この記事では、創業資金融資を受ける場合に、日本政策金融公庫から融資を受けることと銀行から制度融資を借りることについて比較していきます。
創業時に最適な方法で資金調達することができるよう、日本政策金融公庫と制度融資の創業資金融資の違いを理解しておきましょう。
日本政策金融公庫とは?


日本政策金融公庫とは、簡単に言えば国の金融機関で、以下のような特徴があります。
- 財務省所管の国の金融機関
- 国の政策目標と中小企業の資金繰り円滑化のための融資を行う
- 融資の原資は税金
- 信用保証協会の保証はつけない
まずは日本政策金融公庫全般の基本的な概要について分かりやすく解説していきます。
1,財務省所管の国の金融機関
日本政策金融公庫は財務省が所管するいわゆる「国の金融機関」です。
日本には国が所管する金融機関が5つあり、日本政策金融公庫は5つの政策金融機関のうちの1つになります。
なお、5つの政策金融機関とは
- 日本政策金融公庫
- 日本政策投資銀行
- 商工中金
- 国際協力銀行
- 農林中央金庫
になり、一般的な中小企業が取引をすることができるのは日本政策金融公庫と商工中金になります。
これらの政策金融機関は民間の金融機関とは別枠で融資を受けることができるという最大の特徴があるという点をまずはしっかりと理解しておきましょう。
2,国の政策目標と中小企業の資金繰り円滑化のための融資を行う
日本政策金融公庫は国の政策目標を叶えるために必要な融資や、中小企業の資金繰りを円滑化するための融資を行なっています。
例えば、国が「事業承継が中小企業の課題だ」と判断した場合には、事業承継に必要な資金の融資を行うなど、国の政策目標を叶えるために中小企業に必要な資金を融資しています。
また、コロナの際や東日本大震災など、社会的な経済危機の状況下において中小企業に対して必要な資金を供給するという社会的な目標も掲げています。
3,融資の原資は税金
また、日本政策金融公庫や預金を預かっているわけではないので、融資の原資は税金になります。
税金から中小企業に対して必要な資金を供給しているため、必ずしも営利目的で融資が行われるものではないため一定程度の低金利で融資を受けることが可能です。
また、税金を原資とした融資であるため、税金を滞納している人は融資を受けることができません。
4,信用保証協会の保証はつけない
日本政策金融公庫は、民間金融機関が中小企業に対する融資を行う時にほぼ必ずと言っていいほど付ける信用保証協会の保証を付けることはありません。
この点が民間金融機関の融資と日本政策金融公庫の融資の最も大きな違いといえます。
信用保証協会の保証枠は金融機関が異なっても1つしかないので、民間金融機関は実は1つの枠の中で融資を行なっているといえます。
しかし、日本政策金融公庫は信用保証協会の保証はつけずに融資を行うので、民間の金融機関とは別枠で融資を受けることができます。
民間の金融機関から「信用保証協会の保証枠がいっぱいになってしまったから融資はできない」と言われた場合でも、日本政策金融公庫は別枠ですので、融資を受けることができる可能性があります。
日本政策金融公庫の2つの業務


日本政策金融公庫には主に以下の2つの業務があります。
- 国内金融業務
- 危機対応円滑化業務
創業融資を受ける場合には国内金融業務に分類され、国内金融業務はさらに3つの事業に分類されます。
日本政策金融公庫の2つの業務内容と3つの融資事業について詳しく解説していきます。
1,国内金融業務
国内金融業務とは、国民一般、中小企業者及び農林水産業者の資金調達を支援するための金融の機能のことです。
国内金融業はさらに以下の3つの事業に細分化されます。
- 国民生活事業
- 中小企業事業
- 農林水産事業
それぞれの事業でどのような融資を行なっているのか、詳しく見ていきましょう。
国民生活事業
国民生活事業とは、広く国民一般向けの事業で、小規模事業者や創業企業に対する事業資金融資を行なっています。
創業資金を借りる場合には、国民生活事業で対応することになります。
また、子どもの教育資金を借りることができる「国の教育ローン」も国民生活事業で行われます。
国民生活事業の融資先数は88万先にものぼっており、1先あたりの平均融資残高は702万円と小口融資をメインに行なっています。
また、融資先の約9割が従業者9人以下の小規模事業者であり、さらに約半数が個人企業となっており、まさに個人事業主や家族経営の小規模事業者向けの融資を行なっている事業だということができます。
中小企業事業
中小企業事業とは、融資や信用保険などによって中小企業・小規模事業者を支援するものです。
国民生活事業には適用されない中堅規模程度への融資は中小企業事業によって融資されることが一般的です。
さらに信用保証協会への保証や信用保証協会への貸付も中小企業事業によって行われることになります。
農林水産事業
農林水産事業とは農林水産業者への融資業務、経営改善支援を行う事業です。
農協しか行なっていないイメージのある農林水産者への融資ですが、実は日本政策金融公庫も行なっており、平成30年末で3兆円以上の融資残高があります。
特に、新規就農、6次産業化などに対して積極的に支援を行なっており、農林水産業に対する国の政策目標を金融面から後押ししているといえます。
2,危機対応円滑化業務
危機対応円滑化業務とは、大臣が認定する内外の金融秩序の混乱、大規模災害等の危機発生時において、日本政策金融公庫が指定金融機関に対して信用供与を行うものです。
公庫から信用供与を受けた指定金融機関は危機対応業務を行い、危機に対処するために必要な資金供給を中小企業に対して行います。
このように、日本政策金融公庫には、金融危機の際に中小事業者に対して必要な資金を民間金融機関へ供給するという非常に大切な役割を背負っています。
コロナ危機やリーマンショックのような社会的危機の際には、日本政策金融公庫の危機対応円滑化業務のおかげで、民間金融機関は事業者に対してスムーズな資金供給を行うことができます。
日本政策金融公庫の創業融資の特徴


日本政策金融公庫の創業融資には以下のような特徴があります。
- 融資限度額3,000万円(うち運転資金1,500万円)
- 金利1.06%〜2.85%
- 創業資金総額の10分の1以上の自己資金
ただし「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」は自己資金不要です。
日本政策金融公庫の創業融資は基本的には自己資金が10分の1以上必要になりますが、創業前と同じ業種で創業する場合などは自己資金なしで創業することが可能です。
また、無担保でも1%台の低金利で借りることができる場合もあり、低金利で創業に必要な創業資金を借りることができる人気の融資制度になります。
制度融資とは?


このように日本政策金融公庫の創業融資は無担保無保証で、さらに自己資金がない人でも借入をすることができる商品です。
しかし、同じように創業資金を銀行からも借入をすることも可能です。
銀行から創業資金を借りる場合には、地方自治体が関係している制度融資にて借入をすることになりますが、制度融資の主な特徴としては以下の点をあげることができます。
- 地方自治体が用意した融資制度
- 銀行が融資を行い保証協会が保証し自治体が利子補給や保証料の補填を行う
- 金利や返済期間などはあらかじめ決められたパッケージ商品
制度融資の主な特徴について詳しく解説していきます。
1,地方自治体が用意した融資制度
制度融資とは、地方自治体が商品内容を設計している融資制度になります。
地方自治体が地元の経済関係者や金融機関などと協議して商品内容を決定し、当該自治体に事業所を構える事業者だけが利用することができます。
地方自治体が設計している融資商品ですので、金利が低く個人事業主や小規模事業者でも借りやすくなっているというのが大きな特徴です。
ほとんどの自治体で若手の起業家が存在しないので事業所数が毎年減少しているというのは大きな課題になっています。
そのため、ほとんどの自治体で創業融資制度を用意しています。
制度資金でも創業に必要な資金を借りることは可能です。
2,銀行が融資を行い保証協会が保証し自治体が利子補給や保証料の補填を行う
制度融資は地方自治体からお金を借りるわけではないという点に注意が必要です。
制度融資を融資するのは銀行や信用金庫などの地域の金融機関です。
そして、その融資を信用保証協会が保証します。
地方自治体は、制度融資に対して利子の補給措置や保証料の補助を行うという設計になっています。
銀行や信用保証協会は、通常通りに「お金を貸すことができる企業かどうか」という審査を行い、地方自治体は「当該融資案件が制度融資の基準に合致しているか」というチェックを行います。
そのため、制度融資で実質的な審査を行なっているのは銀行や信用保証協会であり、地方自治体ではないという点に注意するようにしてください。
3,金利や返済期間などはあらかじめ決められたパッケージ商品
制度融資は金利や返済期限などがあらかじめ決められたパッケージ商品になっており、審査によって金利が変動するわけではありません。
そのため、どのような企業でも同じ条件で借りることができ、さらに一般的には低金利が適用されるようになっています。
まだ信用がない創業間もない企業や、小規模企業・個人事業主などは、格付けとは無関係に低金利が適用される創業融資で借りることに大きなメリットがあるでしょう。
日本政策金融公庫と制度融資の創業融資を比較してみた


それでは最後に日本政策金融公庫の制度融資と創業融資を以下の3つの視点から比較していきましょう。
- 信用保証協会の保証の有無
- 金利
- 自己資金の必要性
創業資金融資をどちらに申し込むかという点で、両者の違いを知っておくことは重要です。
日本政策金融公庫と制度融資のポイントを詳しく比較していきましょう。
信用保証協会の保証が付くか否か
日本政策金融公庫と制度融資の最も大きな違いは信用保証協会の保証が付くか否かです。
信用保証協会の保証枠は1つしかないので、銀行で制度融資を借りても信用金庫で制度融資を借りても同じ信用保証協会の枠を使って融資を受けている以上同じ枠の中でお金を借りていることになります。
そのため、実は民間金融機関の融資枠は金融機関が異なっても1つしかありません。
一方、日本政策金融公庫の融資は信用保証協会の保証はつけないため、制度融資を取り扱う民間金融公庫と日本政策金融公庫は完全に別枠で融資を受けることができます。
制度融資または日本政策金融公庫の枠がいっぱいになっても、もう一方の枠で融資を受けることができる可能性があるので、制度融資と日本政策金融公庫は完全に別枠だということができます。
金利は同程度の低金利
日本政策金融公庫の創業融資も制度融資の創業融資も金利的にはそれほど大きな差はありません。
どちらも2%前後程度の低金利で借りることができ、ビジネスローンなどを利用するよりもかなりの低金利で借りることができるでしょう。
両方とも自己資金なしでも借入可能
日本政策金融公庫も制度融資も自己資金なしでも創業融資を借りることが可能です。
日本政策金融公庫で自己資金なしで借りることができるのは、創業前後の業種が同じなどの条件がつきますが、一定の条件を満たせば自己資金なしで借りることができます。
自己資金が0円でも創業時に必要な資金を借りることができるという点で、制度融資と日本政策金融公庫の融資は共通しています。
まとめ


日本政策金融公庫の創業融資には以下の特徴があります。
- 低金利
- 制度融資とは別枠
- 自己資金なしでも借入可能
日本政策金融公庫の融資と同じような融資として、地方自治体の制度融資がありますが、大きな違いは日本政策金融公庫の融資には信用保証協会の保証がつかないという点です。
そのため、信用保証協会の保証が必須である制度融資とは別枠で融資を受けることができるので、制度融資で借りることができなくても日本政策金融公庫で借りることができる可能性があり、その逆も然りです。
創業時の資金調達窓口は2つ存在するということを理解して、創業時に必要な資金を確実に調達できるようになりましょう。